3つのYesterday I Had The Blues

ホセ・ジェイムズのアルバムに「Yesterday I Had The Blues: The Music of Billie Holiday」というビリー・ホリデイのトリビュート盤があります。先日、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツの曲に「Yesterday I Had The Blues」というものがあることを知り、何か関係があるのかないのか調べてみました。

事実はこう。

  • Yesterday I had the bluesという言い回しは、昨日は憂鬱だった、みたいな意味で、一般的に使われるフレーズだと思います。
  • ブルーノーツの方は1972年にシングルで出てます。昨日は憂鬱だったけど君との出会いで幸せになったみたいな感じです。
  • ホセものはビリー・ホリデイのトリビュートアルバムで、2015年に出ました。ビリー・ホリデイ生誕100年の年に合わせて出ました。で、アルバムタイトルの「Yesterday I Had The Blues」という曲は入っていません。であるならば、ブルーノーツの曲と同じタイトルにする必要があるのだろうか。
  • Yesterday I Had The Bluesをグーグルで検索すると、ほとんどホセとブルーノーツ関連のものばかり出てくるのですが。どうもそのようなタイトルの本がある模様。Jeron Ashford Frameという絵本?童話?作家が2003年に書いた本。内容は、語り手の男の子が昨日の自分と家族の気分を色で表していき、ついに家族というものはみんなをゴールデンにするもの、と気付くというもの。ブルー、グリーン、グレイ、ピンク、インディゴ、イエロー、レッド、シルバー、ゴールデンの色そのもの、色の名前、そして色から感じる気分を絵本で知らせるような内容。なお、作家はフィラデルフィア在住。
  • 出た順番としては、ブルーノーツ、絵本、ホセ・ジェイムズの順。

推測(妄想かもしれない)はこう。

ブルーノーツはフィラデルフィアで結成され、フィリー・ソウルを代表するグループ。絵本の作家はこの曲を知っていて当然だと思われます。で作った本に曲と同じタイトルをつけたのではないかと推察します。

ホセのアルバムには、ホセが書いたテキストが掲載されていて、幼い時に初めて聞いて好きだったビリー・ホリデイを10代に再発見してジャズシンガーになりたいと思わせたことが綴られています。日本版の翻訳から引用すると…

彼女はあの当時、他の誰もしれくれなかった形で僕の苦しみに語りかけてくれた。彼女の痛みはより深く、年季が入ったものだった。そんな彼女は、悲劇を芸術に変えていくという、最高の才能を提供しているようだった。僕は彼女の声に恋し、彼女の世界に暮らしながら歌い方を学び、彼女の弟子となった。
(引用元:ホセ・ジェイムズ「イエスタデイ・アイ・ハド・ザ・ブルース」ユニバーサルミュージック版、翻訳:佐藤空子)

つまり、ホセがビリー・ホリデイの歌を再発見してから「Yesterday I had the blues」と振り返るまで、その時の状況がまるでブルーノーツの歌詞のような状況で、そういうことをタイトルにしたのではないか、と思ったんです。私の妄想かもしれないけれど、悲劇があったとしてそれを芸術に変えていく、そういうことを歌を通して学んだら、そんな風に振り返ることができるだろうと想像します、はい。

ホセ・ジェイムズ「Yesterday I Had The Blues: The Music Of Billie Holiday」

Yesterday I Had The Bluesの絵本はこれ
https://www.pbslearningmedia.org/resource/btl10.ela.early.yesterdayihadtheblues/yesterday-i-had-the-blues/