寺山修司の贋絵葉書展に行ってきました。自力で数えた限りで図柄は80種類以上、構想といい物量といい凄い熱量で、40年以上前の作品とは思えませんでした。12月25日まで。必見です。
展示の雑感
ステートメントには、作るきっかけとして、アムステルダムの古道具屋のゲテモノの中から見つけた誰かが女性に宛てた消印のある古い絵葉書に心を惹かれたから、とありました。ファウンドフォトを使うのではなく、ファウンドフォト風にゼロベースから自作するあたりに凄みを感じました。『贋の絵葉書作りあそび』との記述がありましたが、寺山映像作品に登場する面々が写っている贋絵葉書からは、あそびどころか、周到に計画したプロジェクトなのではないかと思えました。つまり、きっかけとして説明されている古道具屋でみつけた古い絵葉書自体が寺山の考えたフィクションなのではないかと(妄想しすぎか。ファウンドフォトを集めるより撮った方が早かったのかもしれません)。
インスタレーションが素晴らしかったです。ギャラリーは長方形の一室なのですが、タペストリーで区切り導線を作る、会場に波の音が聞こえるなど、広くはない空間を奥へ奥へと入って行くなかで没入感を感じました。
展示室奥に寺山氏のセルフポートレイトがありましたが、本人の身長に合わせた原寸大だそうで、一緒に記念撮影できるスポットになってます。また、紐が垂れ下がっているところ(黒い紐、白い紐の二箇所あり)は降霊スポットらしいのですが、このときは残念ながら寺山氏とは交信できず。黒い紐のところは会場の端っこでここにいると会場に流れる波の音が右から左に渦を巻いているように聞こえて、いつまでも聞いていたいと思ってしまいました。
贋絵葉書について
寺山修司の贋絵葉書は、白黒写真をあえて劣化させてるのですよ。具体的には、まず白黒写真を撮り、脱色して、そこに人工着色、写真の周りに実在しない宛先と文を書き、古い切手を貼り、ハンコ屋で作った消印を押して、日光にさらして変色させるとのこと。
この手順を知った時に思ったのは、泥水に浸かった被災写真の修復と真逆の手順なんだなということ。壊れていないものをあえて変質させているその行為を、個人的には、寺山修司なりの『直し方』なんだと思いました。そんな風に思ったのは、この後見に行く予定にしていた直す作家、青野文昭のことも頭にあったからかもしれませんが。
『直し方』に着目すると他の作家についてもアレコレ思いつきが出てきますが、また別の機会に。
展示詳細
https://bijutsutecho.com/magazine/news/promotion/20709
展示風景は以下(24枚)