ねこやま家を訪れたことのある方なら判っていただけると思うが、びーはどうも、猫よりも人の方が好きなようで、見知らぬ人が部屋に来ると警戒するどころか、自ら挨拶に出てくる。友人、ガス水道など設備工事の作業員など、誰彼構わず挨拶に出てくる。特に、設備の修理は見る機会が少ないので興味があるようで、いつも作業員の作業を傍らで見守り、頭を撫でてもらうと満足そうにしている。
びーがウチに来たのは、そのような性格に依るところが大きい。びーは2003年4月にインターネットの里親募集サイトから探した猫だ。前の月の3月に、1年8ヶ月前に保護した猫が腎不全のために他界し、どうしてもその猫と似たような猫が飼いたいと思い、里親募集サイトを何日間か探して見つけた。メールでサイトオーナーのTさんと何度かやりとりをし、5月の連休中にお試しで飼ってみて連休後に飼えるかどうか結論を出せばよい、とのことで、4月下旬に連れてきてもらった。ちなみに里親募集サイトでは4月から里親募集を開始したことにちなんでエイプリルちゃんと呼ばれていた。
猫の場合、知らない家に初めて行くと、様子が違うのでタンスの裏などに隠れるなど、多かれ少なかれパニックになる。まーは3日間、人目につくところに出てこなかったし、他界した猫(ちゃー)は怪我をしていた外猫だったが、ケージに入れられたのが不満で長い時間鳴き止むことはなかった。一方エイプリルちゃんの場合は、キャリーバッグから出ると何事もなかったかのように、部屋の偵察からはじめ、床においてある猫じゃらしで一人遊びをし、椅子で寝てしまった。
その間、Tさんから、これまでエイプリルちゃんと出会ってからのことを伺った。地域猫活動のため動物愛護センターの常連のTさんが、ある日行くとオフィスにケージがあり、黒猫が入っていたこと。どうしたのか尋ねると、近隣の人が野良猫がいるとセンターに連れてきたのだが、あまりにも人馴れしているので、きっと飼い主が見つかるだろうと、この黒猫だけ別に入れておくことにしたこと。以来、Tさんが何度か訪れると、その黒猫はまだケージの中にいて、毎回Tさんに話しかけてきたこと。ついにはTさんが放っておけなくなり、Tさんが引き取り里親を捜すことになった。里親募集サイトにだして、すぐに連絡をしたのが私だった。
そんな話の後、Tさんは2時間ほどで帰った。知ってる人が居なくなってしまったので、そろそろ、出してくれと鳴き叫ぶのだろうと思ったが、何事も起こらず、ご飯をねだったり、先住猫まーにちょっかいを出したり。こんな猫も居るんだなと不思議に思った。
名前は、まーの時と同様、既に付けられていた仮名、エイプリルでいいかなと思ったのだが、後日、Tさんから「でもエイプリルちゃんって言い難いですよ」と言われ、それもそうなので、考えることにした結果が、びー(笑)。ブラッシングしていたら、黒猫の毛がまーよりも密で、ビロードのような光沢があることに気づいたからだ。ビロードのびー。ビロードのような毛艶は今では着古した感が否めないが、それでもビロードであることには変わりない。
この記事は2012年9月に、ねこやま猫道Facebookページのノートに投稿したものを再掲したものです。写真は2003年12月のびー。