ちゃーの記録/その1

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拾ったとき既にFIV陽性で腎不全であった猫、ちゃーの我が家での全記録です(2004年11月に書いたものを再録)


出会い

2001年7月11日、帰宅途中にアパートの階段を下りてきた猫と目が合った。こちらがじっと見ていても逃げる様子は無く、私がしゃがみこむとその猫から近づいてきて、私の足元に座り込んでしまった。触ると体中から抜け毛がこれでもかというくらいに出て、左前足の肉球にはまともに足を着けないほどの怪我を負っている。それが「ちゃー」であり、出会ってしまったとしか言い様のない気持ちでいっぱいになった。すぐさま家人に電話を掛け、先住猫用のキャリーバッグを持ってきてもらい、家に連れ帰った。当時はせめて怪我が治るまでは面倒を見ようなどと話しながら家路を急いだのだが、思い起こしてみると、そのとき既に飼うと心に決めていた。

さて、家の明かりの下で見てみると怪我の様子も思いのほかよくないのが判ったので、動物病院に連れて行くことにした。検査の結果、FIV(猫免疫不全症候群ウィルス)陽性であることが判った。我が家には既に先住の猫もいることから病院からは無理に飼わなくてもいいのではないかとも言われたが、あまりにも忍びなく、我が家の猫となったわけだ。

病気について

FIV(猫免疫不全ウィルス)感染症は、口内炎や下痢などのエイズ関連症候群と呼ばれる症状の後に最終段階のエイズ発症となる。感染は、FIV感染猫とのケンカによる咬み傷で出血するような場合に感染猫の唾液や血液からウィルスが侵入することで起こる。

ということは、家の中で感染猫とそうではない猫を飼う場合も感染の可能性がないわけではない。我が家の場合は、先住猫まーがメスで、不妊手術をしており、おとなしい性格であった。一方、感染猫ちゃーもメスであった。二頭がメス同士だとケンカのリスクも少ないように思えた。最終的には、二匹とも家の中では自由にさせるようにしたが、当初は肉球のケガで出血していることと、まーが度々威嚇していたことを考慮し、ちゃーをケージに入れて飼うことにした。

ちゃーは非常に人が好きな猫であり、私との最初の出会いの時も向こうから近づいてくるような猫であったし、動物病院に連れて行く時もあまり抵抗することもなく、治療中も人間の好きにさせるような懐の深い(?)猫だった。とはいえ、今まで自由に歩き回っていた環境から突然狭いところに連れてこられた訳で、夜寝るときや、人間が外出するためにケージに入れておくような場合にあげる抗議の声は相当なものだった。だが、そのことについては猫が可哀相であるなどと悩んだ記憶がない。家でしなければならない投薬などに、こちらが慣れておらず、必死になっていたせいかもしれない。

肉球のケガについては朝、晩に消毒をしていたが、かさぶたができ少し良くなったかと思うと、かさぶたが剥がれて出血し、というのを何回か繰り返した。これには悩まされたが、四ヶ月経った十一月には傷も癒え、出血することもなくなった。

いちばん悩まされたのは、嘔吐である。飼い始めて二週間経った頃から吐くようになり、血液検査(保護したときの血液検査はFIVかどうかの、いわゆるエイズ検査であり、一般血液検査はしていなかった)をすることにした。その結果、腎不全であることが判明し、その日から処方食と投薬を開始した。2001年7月29日のことであり、腎機能の指標となるBUN(尿素窒素)が46.6、CREA(クレアチニン)が3.55と高い数値を指していた。

嘔吐の原因はなんだったのか今も判らないが、免疫不全や腎不全を抱えていれば、そういうことも起こりうるのかもしれない。当時は一週間に二回くらいは嘔吐しており、しかも明け方早くに胃液を吐くことが多かった。嘔吐についても胃腸薬と吐き止めの投薬を毎日行っていた。

二ヶ月に一回程度に血液検査をし、数値が高めの場合は、皮下輸液をしてもらい、2001年はそのような対処療法で小康状態を保っていたが、年があけ寒さが厳しくなってくると、私の目からもしんどそうにしているのが判るようになり、ついには自力で食餌を採ることができなくなった。(続く)