あいちトリエンナーレの「表現の不自由展、その後」の展示が閉鎖されてから、参加アーティストたちによる様々なアクションがありました。あいトリの展示会場の一つでもある円頓寺地区に8月後半に開設されたアーティスト・ラン・スペース「サナトリウム」もその一つで、閉幕まで一時的なスペースとして活用されると聞いて一度行ってみたいと思っていました。
また、9月に入り、ReFreedom_Aichiという『閉鎖されている全ての展示の再開を目指すプロジェクト』も始まり、『アーティストと観客の声を再開のための交渉のテーブルに届けます』というアクションに、私はとっても共感してしまったのです。
どこに共感したかといえば、アーティスト側のアクションだけでなく、オーディエンスも参加できる取り組みが用意されているところで、その一つが、 #YOurFreedom 。これは、『オーディエンスと展示が閉鎖されているアーティストたちとのコラボレーションとして、現在閉鎖されている展示室の扉に、オーディエンスに「あなたの不自由」を付箋に書いて貼ってもらうプロジェクト。再開を支持するオーディエンスの声を可視化し、再開までその量を蓄積する。SNSを通じても拡散し、国を越えたムーブメントへと育てる。』もの。
どこからでも、誰でも参加できるので、参加したいと思ったのですが、不自由ってなんだろうと考えてみるとパッと出てこないんですよ。それは私が自由だからなのではなく、日々のちょっとした不自由を我慢しているというか、気にしたってしょうがないしと気にしていないふりをしているというか、もっと言ってしまえば、なかったことにしているんですよね、多分。で、ワークショップがあるというので、行ってみたら気づくこともあるかなと思ったのでした。
そして色々気づいたり受け止めたり癒されたりしてサナトリウムを後にしたのですが、まさか、この時は、次の日15日に大きな不自由を感じることになるとは思うはずもありませんでした(苦笑)。なお、15日の不自由については別途書きます。
#YOurFreedom プロジェクト
YOurFreedom(ユアウア・フリーダム)という名称は、あいちトリエンナーレ2019のテーマ「情の時代 Taming Y/Our Passion」に由来していて、「あなたの」と「私たちの」をひとつにした言い回し。不自由を紙に書いて貼る形態はあいトリ参加アーティスト、モニカ・メイヤーの「The Clothesline」に由来しているとのこと。モニカさんのプロジェクトは女性から、差別されていると感じたことなど小さな声を拾い上げるもので、女性一人一人が書いた紙を洗濯紐(clothesline)に吊るしていくという形態。モニカさんも今回のYOurFreedomに賛同しているとのこと。また、9月14日からテストオープン的に展示室の扉に貼り始めているとのことでした。
プロジェクトに参加しよう
オーディエンスとしてプロジェクトに参加できます。いくつか紹介すると。。。
SNSで投稿
『SNSでは#YOurFreedomのハッシュタグを使い投稿を募りたいと思います。
質問内容はこちらです。
ー あなたは自由を奪われたと感じたことはありますか?
あるいは不自由を強いられていると感じたことはありますか?
それはどのようなものでしたか?
ぜひ、この質問の答えを紙に書いて、ハッシュタグをつけて投稿してください。』
https://www.refreedomaichi.net/your-freedom
在廊できる人を募集
YOurFreedom は現在は愛知芸術文化センター8階の展示中止の扉に貼っていってます。その脇には机と椅子、用紙と筆記用具が用意されて、その場で書いて貼れるようになっています。来場者が書いたものを管理する必要があるので、こうなると誰かついていないといけないのですよね。在廊という言い方が正しいかはわかりませんが、いてくれる人を募集したいそうです。なお、このプロジェクトは作家主導でやっていることで、美術館とは距離を保つためにも、美術館のスタッフやあいトリのボランティアではなく、作家が募集するとのこと。できそうな人はお願いします!
翻訳できる人を募集
9月14日現在は、説明が日本語のものしか用意できていませんでした。他の言語でも用意したいそうなので、できる人はお願いします!こちらであれば遠隔でもOKかと思います。英語であればReFreedom_Aichiのプロジェクトページの下に英語があるからこれでいいと思うのだけど。(追記:英語とハングルの用紙はある模様)
クラウドファンディングで応援
ワークショップではあまり触れられていませんでしたが、クラウドファンディングで資金を募集中です(目標金額1000万円、10月14日まで)。ただ今610万円まできてます。できそうな人はお願いします!
詳細は以下。
https://camp-fire.jp/projects/view/195875
ジェンダーステートメントに賛同する
『あいちトリエンナーレ2019の騒動をジェンダー、人種による差別からくるヘイトクライムであると捉えた本トリエンナーレ参加アーティストらが、この騒動に対して、本トリエンナーレの重要な指針でもある「ジェンダー平等」からのレスポンスとして制作したステートメント。芸術生産に携わる者であればプロ、アマ、アーティストやキュレーター、研究者やオーディエンスなどの立場を問わず、あらゆる人が署名することができる。』
https://www.refreedomaichi.net/gender-free-statement
その他、応援できそうなこと(あくまでも私の思いつき)
- YOurFreedomの用紙を買ってくるとか、印刷するとか、紙を切るとか
- YOurFreedomのハッシュタグがどのくらい集まったか集計するとか。これは絶対やったほうがいいと思うのだけど。できる人いませんか?(9年前にPLASで「1 tweet, 1 smile」というツイッターキャンペーンをやったときは集計したのですが、もうやり方覚えていない。当時はperlのスクリプトを団体のサーバーに置いてそれを動かして収集した)。以下の記事でも読んでみようかな。
SNSでどれくらい拡散(バズ)されているかが“ひと目でわかる”ツール16選
作戦会議xワークショップ雑感
ReFreedom_Aichiサイトでも述べられていますが、このような取り組みはあいトリが閉幕して終わる問題ではないと語っていたのが印象的でした。海外ではアーティストユニオンのようなところが(具体的な名称は聞きませんでした)、表現の自由などを含めた芸術宣言を美術館に承認させていくプロジェクトがあるそうです。『日本の芸術祭、美術館の実態を踏まえた表現の自由の確保、アーティストやキュレーターの権利保護など、今後さまざまな機関で批准されるべき理念と具体策を、外部からのアドバイザーや過去のあいちトリエンナーレの関係者も招き構築。』するための草案作りから始めるとのこと。どのように進んでいくかはわかりませんが、一ファンとして応援したいです。
今回のワークショップについてですが、実は、サナトリウムに行く前に名古屋市美術館に行ったのですが、モニカさんの展示(変更されているので、女性たちの小さな声は見ることができない)は、ウェブなどでみた様子とはだいぶ印象が違いました。つまり行かないとわからない、体感しないとわからないものもあるということかもしれませんが、展示のインスタレーションが思ったよりも大きくて、会場の壁面には過去の「The Clothesline」の写真が貼られていて、いろいろな言語で書かれた紙を見ていたら迫るものがありました。とにかく長期間継続してきて凄いです。
また、緊急会議では、変更する前のモニカさんの展示をみた感想として、ショックを受けた、想像と違う、書けないなどの意見がありました。私も辛い経験を個人的に書くのはいいとしても、貼って人に見られるのであれば本当に辛いことは書けないのではないかと思ったのですが、逆にいえば、辛い経験と向き合ったからこそ書けるのだろうかなどと考えました。そういう意味では、ワークショップで書いたものは見られても平気なレベルな出来事しか書けませんでした。テレビの取材も来ていたから見せられるレベルのことしか書かなかったとも言えますが。とはいえ、今の時点で辛さMAXなことは書けないです。なぜ書けないのかと考えると、整理できていない、向き合っていないからかと今は思っています。
サナトリウムには作品も展示されているので行ってみてください。
※なお、上記の斜体テキストはReFreedom_Aichiサイトより引用したものです。
https://www.refreedomaichi.net/