猫が語り手の小説です。職場がある建物に入ってる本屋さんを覗いたら通い猫アルフィーのシリーズが平積みになっていて、表紙の猫のイラストがとても印象的で気になりました。この東久世さんのイラストがなければ読もうとは思わなかったでしょう(ちなみにオリジナルの表紙はこちら)。翻訳されたシリーズはこれまでに4冊。舞台はロンドン。作家は英国在住のレイチェル・ウェルズ。アルフィーはブリティッシュショートヘア(たぶん)の雄猫。
本作はシリーズ1冊目。引っ越してきたばかりの四家族と猫の関わり合い方から目を離すことができず、一気に読んだ次第。雄猫が語り手の小説というと夏目漱石の「吾輩は猫である」がありますが、本の冒頭、猫が路頭に迷う描写から一軒の家に潜り込むくだりや、多彩な人物の描き方が「吾輩」を彷彿とさせました。逆に一番の相違点は、人間が猫にあまり話しかけない点でしょうか(笑)。もっともアルフィーより100年余り前、1905年(明治38年)の日本において猫に自分の感情を吐露する小説を想像するのが難しい気もしますが。
さて、本作ですが、人が猫との交流を通じてハッピーエンドを迎えるお話。そこに至るまでに四家族が抱える心配事がアルフィーの目を通して展開されるのですが、ざっくり言うと現代人に共通する悩みでして、この点がいわゆる動物ファンタジー(古くて、映画で、しかも犬で恐縮ですが、ベンジー、ベートーベンとか)とは異なる点ではないでしょうか。人間の言葉を理解する動物が人間を助けるというと、またまた犬で恐縮ですが、ディーン・クーンツの「ウォッチャーズ」を思い起こしました。
猫が真理を言うのも「吾輩」と似ています。
私はこれが好きです。
「そう、生きていくとは、そういうことなのだ。」
…読んでいないとイミフですよね(ぜひ読んで見てください)。
通い猫アルフィーシリーズの順番は以下。2作目以降も読みたいですね。
- 通い猫アルフィーの奇跡
- 通い猫アルフィーのはつ恋
- 通い猫アルフィーとジョージ
- 通い猫アルフィーと海辺の町
ちなみに、ねこやま猫道の「ねこまんが」も猫が語り手ですが、絵付きで語るのはちょっとウザいかもしれません。語り手にするのは小説に限るのでしょうか。猫が語る小説を探してみたくなりました。
参考までに「ねこまんが」はこちら。
ねこまんが