レビュー

[展示] 椿会展2016 -初心-

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資生堂ギャラリー・ウェブサイトの椿会展概要(以下に引用)を読んで、展覧会自体にとても興味を持ちました。70年近い長い歴史があるグループ展ということは、この展示がギャラリーのミッションとも大いに関係していそうであることが、そして同じメンバーで5年間(過去にはもっと長い期間もあったらしい)行うことからは、いわゆるグループ展というイメージを超えてもっとプロジェクト性(5年間でこのプロジェクトを遂行するんだ!的な)のあるものであることが、想像できました。

「椿会」は、1947年から続く資生堂ギャラリーを代表するグループ展です。時代とともにメンバーを入れ替えながら、70年近くにわたり継続してきました。

第七次椿会は、2013年に赤瀬川原平、畠山直哉、内藤礼、伊藤存、青木陵子の5名で結成されました。同じメンバーで2017年まで年1回の展覧会を開催します。「初心」というサブタイトルは、「3.11」から復興していく過程において、初心を問い直す時期にあるのではないかとメンバーと共に話し合い、決めたものです。

展示を見る前にちゃんと概要を読んでおけばよかった、と後悔しました。事前に頭に入れておいたほうがいいこともありますよね。以下に、椿会についてと展示について覚書します。

椿会について

資生堂ギャラリーは1919年(大正8年)に創設されたそうで(あと3年後には100周年!)、関東大震災、第二次世界大戦、戦況の悪化に伴うギャラリー閉鎖という様々な困難を経て、終戦から2年が経とうとしていた1947年5月に再開。再開後初となる展示がグループ展・椿会第一回展。その招待状に書かれていたステートメントの中に『日本美術の顕現のため再開いたします』という一文があったそう(「資生堂ギャラリー75年史 1919~1994」の編輯に携わった綿貫不二夫氏のエッセイで知りました。とても面白いです)。

実は聞いたことすらなかったのですが、顕現は『はっきりと姿が現れること。また、物事をはっきりとあらわすこと。』だそうで、70年近く経った現在においてもメンバーを入れ替えてテーマを決定し展覧会をつくりあげていくところは、『日本美術の顕現』という精神を受け継いでいるように思えました。ちなみに第一次椿会は1947年から1954年まで8年続き、錚々たる顔ぶれに驚きました。資生堂ギャラリー・ウェブサイトの椿会メンバーの変遷で確認できます。

そのような歴史のある展覧会にも関わらず、実は昨年まで全く気づいていませんでした。昨年夏にインターネットで見つけ、しかも会期が過ぎていたので、にわか畠山直哉ファンとしては大変悔しく「絶対に来年は忘れないようにするぞ」と思った次第。

展示について

ギャラリーフロアに通じる踊り場も展示スペースになっており、ワクワクしながら降りていくと、フロアの右側の壁面に畠山直哉氏による撮りたてのメキシコの風景写真が。そして天井からシンバルが吊るされている。誰かが蹴飛ばしてしまいそうと心配になりそうな感じに小さな人形がフロアに配置。そうかと思えば赤瀬川原平氏のペン画が整然と並んでいる。奥のフロア、テーブルの上には青木陵子氏のzineのページが並び、来場者自身がページの順番を決めてzineを作れるような仕組み。

テーマ「初心」を強く感じたのは2014年10月に他界した赤瀬川原平氏が1970年代に制作したペン画でした。白熱電球をモチーフに三枚一組で額装されているペン画が何点も展示されていましたが、同時期に見られるので、これはアイディアが明快だとか、これは苦しそうだとか、こちらの思い込みかもしれませんがなんとなく気づくことがあるのですが、そういう状況でもとにかく作り続ける、執着する姿勢と初心が結びつきました。

また、畠山さんの作品は、2011年以降の作品としては陸前高田の風景以外のものでは初めてなのではないでしょうか。日本国内でも長距離を電車で移動する場合に、車窓から見える景色に違和感を覚えることがあると思うのですが(住宅の並び方とか屋根の形状や外壁の質感が、自分の住む地域のものと全然違っているのを見て)、それに近いものを感じさせる写真でした。

フロア受付に過去の図録が置いてあったのですが、「初心」の図録写真は一部を除いて畠山さんが撮影されています。今年の図録はまだできていなくて予約しましたが、2013年からの図録は購入しました。カタログの写真とはいえどんな風に撮影しているのか見たかったからなのですが、家で眺めてみて買ってよかったと思いました。

というのは、毎年参加作家の方々がテキストを寄せているのですが、作者のコンセプトや当時の考えがわかり、知らないで見るのとは随分印象が違うのではないかと思ったからです。例えば、昨年の図録に掲載された青木さんのテキストを見ると、今年展示された椿会のメンバーとやりとりをしながら作ったzineは、5年続くプロジェクトの一環というか、椿会に参加後に蓄積された思いの延長線上にあるのでは、と想像することができ、ページを集めて綴じるというzineの行為だけに参加するのではなく、zineのページ内容をちゃんと見たくなりました。

他の出展者の作品もちゃんと見ていないので、もう一度行くつもりです。

■椿会展2016 -初心-
会期:2016年4月28日〜6月19日
開催時間:
平日:11:00-19:00
日・祝:11:00-18:00
(月曜休み)
会場:資生堂ギャラリー
入場料:無料
展覧会サイト:
http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/past/past2016_03.html

■2013年〜2015年の椿会展 ー初心ー
https://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/past/past2013_02.html
https://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/past/past2014_02.html
https://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/past/past2015_02.html