マグナム正会員の写真家、アレック・ソス(Alec Soth)のCP+での講演(2月27日)があり、参加しました。どんな人なのか全く知らなくて、事前に英国テレグラフの記事を眺めた(読んではいません)のみでした。
自身の写真集と掲載写真をプロジェクターで紹介しながら、どんなことを考えながら作品を作っているのかを解説する内容で、同時通訳の日本語訳が配られたイヤホンから聞こえるという状況でした(通訳も複数人体制で結構金がかかっていました)。
講演からは、撮影した写真からつながる写真を撮っていく(From Here To There)、インタビューをしながら出会った人の写真を撮り、夢を紙に書いてもらう(Sleeping by the Mississippi)、近接した地域でありながら社会的格差がわかるような写真をとる(Michigan)、などの制作スタイルの片鱗がわかり、写真集づくりのヒントになるような内容でした。それらの写真は決して明るい気分になるような写真ではなく、かと言ってジャーナリスティックに告発するようなものでもないのですが、そこに横たわっている諸問題をそのまま捉えているような印象があり、説得力がありました。と同時にプロジェクトを進めている途中で鬱々としてしまうこともあると思うのですが、どのように気持ちを切り替えているのか聞いてみたかったです。
また、質疑応答でも言ってましたが、何度も質問されるそうですが、基本的に米国以外で作品は作らないそうです(ただし、仕事は別)。その理由は、自分が米国を理解しているのと同じくらいに理解している国がないから。いくつかの写真を例にとって説明していましたが、なるほどと思わされました(説明しにくいので割愛しますが)。
だから?、ニューヨーク・タイムズの仕事で日本で撮影することになった際には、映画「ロスト・イン・トランスレーション」(ソス氏が好きな映画だそう)が撮影されたパークハイアットに泊まって、外に出ないで、東京のいろんなものを自分の部屋に持って来ればいいんだ!と思って撮影に臨んだといいます(ニート、レンタルガールフレンド、ミュージシャン、セックスドール)。会場で聞き取れなかったのですが、ニューヨーク・タイムズのサイトで紹介されている内容(これ見ごたえあります!6人の写真家が6つの都市を撮影。ソス氏は3つめの東京。ホテルの部屋で撮影した写真も見られます)と似たようなことを言っていた気がします(自分はロストイントランスレーションだったからのくだり)(訳が乏しい…)。
外国の異文化の中での撮影には注意深さをいつも持っているが、ここ東京ではやってのけることができたかのように感じた。というのは、街中に入っていく振りをしていないから。完全にロスト・イン・トランスレーションで、全く理解していないモノの素敵な外面を見せられていた。
今回の来日に合わせて、日本でもプロジェクトを敢行。これが、英語が流暢ではない日本人女性と北海道に旅をするというもので、ソス氏のロスト・イン・トランスレーションをさらに発展させたのでは、と感じました。
写真集のダミー本も興味深いものでした。撮影時に交わした会話がキャプションとして使われていたりしますが、写真と余白とキャプションの関係性がコミュニケーションの取れてなさを表しているようにも思えて面白かったです。計画の無さ(行く日と帰る日しか決めてない)、混乱させられるのが好き、という自らの気質を、自ら説明していましたが、これはカメラで撮る時と似ている気がしました。何かに出会って(混乱して)反応した結果が写真になる、という意味で。
また、北の町は自分の育った町?に似ている、深瀬昌久の「鴉 Solitude of Ravens」が好きで、それに近いものも感じた、などの発言もありました。意外と日本の作家から影響を受けているのかもしれません。