レビュー

[書籍] 「1985/写真がアートになったとき」

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ひょんなことから、1985年につくば写真美術館という日本で最初の写真美術館があったこと、それから25年後に当時を振り返ったシンポジウムがあったことを知りました。

「1985/写真がアートになったとき」というタイトルで青弓社より2014年に出たこの本は、つくば写真美術館研究の報告書とも言えるもので、つくば写真美術館とは何だったのかの論考とシンポジウムの書き起こしに加え、立ち上げメンバー7人のうち館長とキュレーターの4人に個別インタビューしたものをまとめたもの。
そのメンバーの名前を見て驚きました。6人のキュレーターには、現在では写真史、美術史、写真評論で著名な金子隆一氏、伊藤俊治氏、飯沢耕太郎氏がいて、館長はツァイト・フォト・サロンの石原悦郎氏(なお、他の3人のキュレーターも写真家、他の美術館の立ち上げ、美術館の学芸員として活躍)。

第一部の論考とシンポジウムを読んでいると、例えが変かもしれないですが「トキワ荘物語」みたいな(現在の著名漫画家たちが若い頃から知り合いだったのか!的な)衝撃があり、物語を読んでいるようでもあり、一気に読みました。ちなみに最年少の飯沢氏が開館当時31歳なので準備段階では20代と皆若いです。
彼らが当時出会えたのは、ツァイト・フォト・サロンでの写真に関する研究会や写真家・大辻清司が自邸で行っていたサロンに写真好きが参加していたことがきっかけとのこと。色々なバックグラウンドの人が写真を通じて出会い、写真業界の内側にいなかった若い人たちがキュレーターを務めたことは凄いのではないかと思うし、今日における、写真を好きな人たちが写真や写真集をネタに語るカルチャーは、このようなところから誕生したのでは、と思わずにはいられません。

伊藤氏が書いたという展覧会序論を読むと、この言い方は85年には随分新しい感じ、かっこよかったのだろうと心から思えます(以下に引用)。

あらゆる都市のなかで、パリほど『19世紀』という概念と親密に結びついている都市はない。同じような意味でニューヨークほど『20世紀』というイメージにぴったりの都市はないし、東京ほど『21世紀』という新しい時代像に密接に関わる予感を秘めている都市はないように思う。

写真史に即して言えば、このようにいいかえることができるかもしれない。写真は『パリ』で生まれ、『ニューヨーク』で成長し、今、『東京』で新たな形で展開されようとしていると。

第二部の石原氏、金子氏、飯沢氏、伊藤氏へのインタビューも読み応えがあり、そんなエピソードがあったのかと驚くことがたくさんあり、もっと話が聞きたくなりました。また当然といえば当然なのですが、四者の写真や芸術に対する熱意が話す内容からビシビシ伝わってきて、振り返って自分のこととして考えたときに、これほどまでに熱意を持って写真に触れたり、作ったりしているのだろうかと思ってしまいました。

本を読まないまでも、石原氏と飯沢氏がそれぞれ当時を振り返ったテキストがあるので、こちらは是非ともご一読してみては。
http://www.smt.jp/85/05/ishihara_text.html
http://www.smt.jp/85/05/iizawa_text.html