恵比寿映像祭で上映された作品「相互接続への夢―― 《ドリームズ・リワイヤード》」の監督の一人であるマヌ・ルクシュさん、マヌさんと親交のある畠山直哉さんのトークが2月22日に恵比寿映像祭関連イベントとして行われました。トークの覚書と雑感を書いておきます。
(写真は「thamesmead architecture」で画像検索した結果。こんな建物の画像が紹介されていました)
出会い
学生の頃に1年間タイに滞在する機会があったマヌさん。休暇を利用して日本を訪れた際に知人を介して紹介されたのが畠山さん。23年前のことだそうです。
以来、マヌさんはイギリスに住み、ロンドンでパートナーであるムクルさんと共に、アートコミュニティー(生活の中で実験的なことを行うソーシャルハウジングのプロジェクト)を維持していく中、今度は畠山さんが朝食会(マヌさんとムクルさんがゲストを迎える会で朝食を食べながらの会合?)に呼ばれる機会があったとのこと(2010年)。
テムズミード
ロンドン中心部から15キロほど東へ行ったところにテムズ河畔の湿地帯があり、1960年代に再開発の一環としてロンドン市建設局により作られた大規模団地テムズミード。建設から半世紀近く経つ中で様々な問題が起こり、建て替えのための立ち退きが2013年から始まったようです。
テムズミードの団地は1974年までに建設され、特徴としては各戸が独立していて、歩行は1階は禁止され2階に歩道が作られています。これは1953年おこったテムズ河の洪水の被害が大きかったために採られた仕様のようです。
設計当時は、未来がこうなればいいという気持ち、ユートピアへの思いが詰まった団地でしたが、構想を実現させても思ったような未来はやってこなかったのが現実でした。過去に思い描いたもの(未来)が懐かしく思える、という言わば、時間の逆転現象のようなことが感じられます。
ちなみに、テムズミードは映画「時計じかけのオレンジ」のロケ地の一つとのこと(このシーン)。
個人的な参考として、Wikipediaのリンクをおいておきます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Thamesmead
テムズミードのコラボレーション
2010年以来、畠山さんとムクルさんがコラボレーションしているそうで、4月4日から開催される資生堂ギャラリー「椿会展」で展示予定とのこと。いわく、写真は限られたことしか教えてくれない、写真を助けてくれるメディウムが必要とのこと。畠山さん撮影のテムズミードの写真にムクルさんのテキストの展示になるそうです(参考:資生堂ギャラリーのページ)。
雑感
トーク中にマヌさんの映像作品「Unknown Territories」を映したのですが、よかったです。エレナ・ギブソンというバレエダンサーを撮ったもので、交通事故に遭いバレエを踊るのが困難になったところにポールダンスと出会い、エレナさんいわく「完璧に自由に」踊ることができるように。ポールダンスはバービガンセンターを背景に、またキッチンを背景に妊娠中のエレナさんが踊るシーンもありました。映像、ダンス、筋肉の美しさに圧倒されました。
マヌさんのサイトにUnknown Territoriesスチル写真がありました。
また、この映像のロケ地バービガンセンターは、テムズミード同様に再開発(第二次世界大戦の焼け跡の再開発)として建てられた文化施設。といってもロンドンから15キロ離れたテムズミードとは異なり、バービガンはロンドン中心部にあることや文化施設が併設されていることもあってか、住宅の価値も毀損されていません(参考:ブルータリズム建築の名作《バービカン・エステート》の住み心地)。
テムズミードもブルータリズム建築ということで、ガラスやコンクリート打ちっ放しなどむき出しの素材感や各戸の箱っぽさがわかるようなデザインで、いくつか映された畠山さんの写真から建物の線と壁面に使われている色の構成の面白さが伝わりました。
■恵比寿映像祭・トークイベントのページ
「YEBIZO MEETS」Ⅲ リンクセッション:オーストリア大使館・オーストリア文化フォーラム
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