マーティン・スコセッシ監督によるジョージ・ハリスンのドキュメンタリー映画「George Harrison / Living In The Material World」を観てきた。途中10分の休憩をはさむが3時間半という長さ、特別料金2500円にも関わらず、盛況な入り。長さも全く気にならず、よくぞ、ここまで縮めることができたなと思った。とにかく資料映像が豊富だった。編集大変だっただろう。
映画では、時系列にビートルズ結成前からビートルズ時代、ソロ時代、半引退時代、最期までを追う。当時のライブ映像やスチル写真がふんだんに引用され、懐かしいというよりも、ジョージの音楽の素晴らしさや世の中にもたらした功績など改めて気づかされた。長さを感じることなく、飽きずに観られたのは、効果的に挿入された関係者へのインタビュー映像によるところが大きい。元ビートルズのメンバーであるポール、リンゴはもちろん、一緒に活動したミュージシャン(エリック・クラプトン、クラウス・フォアマン、トム・ペティなど)、ジョージの家族、そして、映画製作の仲間、親交のあったカーレーサー、僧侶。多数の関係者が映画のために証言をしている。また、生前のジョージのインタビュー映像も、全く観たことがないものばかりだった。
ビートルズは、今の「バンド」というシステムを作ったイノベーターでもあり、頂点に立ってしまった者ゆえの不条理を一時でも忘れるには、4人で仲良くすることだったらしいことが判り、メンバー全員がいる会見で垣間みられる仲の良さは、そういうことかと思った。また、彼は、インド音楽や瞑想への傾倒でも知られているが、なぜそこに行き着いたのかが理解できるような作りになっていて、色々と考えさせられた。
私は中学1年生の時にビートルズのベスト盤(赤盤、青盤で今も通じるのだろうか)を買い、青盤に入っていた「While My Guitar Gently Weeps」でジョージのファンに。リアルタイムにアルバムを買うことができたのは「ダークホース」から。その後「慈愛の輝き」あたりで冷め、社会人になってからは、「Set On You」のヒットや、クラプトンとの来日公演、トラベリング・ウィルベリーズとしての活躍など知っていたものの、熱心に聴くことはなかった。2001年に「All Things Must Pass」のデジタルリマスター版が発表され、即購入。ジョージのアルバムで最も好きな作品であり、再び聴くようになったが、彼は同年11月29日に他界。
映画のタイトル「Living In The Material World」は1973年に発表されたアルバムタイトルと同じ。こちらといい、「All Things Must Pass」といい、いい意味で醒めた視点で物事をとらえることができる人なんだなと思う。そんなところも好きになった理由であり、振り返ってみれば、そういう人になりたくて、今の私の頭の中が形成されたんだな、と思う。
彼は曲作りを譜面ではなく、録音で記録していたようで、映画の中では曲のドラフトなども紹介されていて、レコーディングされた曲との味わいの違いを楽しめる。「Here Comes The Sun」誕生のエピソードが、証言者の一人によって語られるが、これが素敵だった。
個人的には、今というタイミングでこの映画を観ることができたことが嬉しい。これからどうしたらよいか迷った時のコンパスを手に入れたような気がする。
(このテキストは2011年11月24日に、当時運営していたブログにジョージの映画をみたあとでポストしたものです)