あいちトリエンナーレ2016|岡崎、豊橋はディープだった

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あいちトリエンナーレ2016、名古屋、岡崎、豊橋の3会場で10月23日まで開催中ですが、日帰りで二度ほど行ってきました。まずは、東京から近い豊橋、岡崎に先に、2回目は名古屋に。ここでは、豊橋、岡崎の展示についてまとめます。

品川から豊橋へは新幹線ひかりで1時間16分と意外と早く着きます。また、豊橋会場の多くが11時オープンなのに対して、岡崎会場の多くが10時オープンなので、岡崎を先に見ることに。豊橋から岡崎(東岡崎駅)へは、名鉄名古屋本線の特急で20分程度。自由席なら550円です。特急は1時間に4本程度でていて便利です。

日帰りなので、事前に見る順番を決め、全て見ることは諦めました。どうしても見たい展示と、あとはビテチョーのトリエンナーレ開幕レポート岡崎・豊橋編で紹介されてたものを優先することに。トリエンナーレのウェブサイトでエリア地図をみながら、以下の順番で行くことにしました。ちなみに、各会場にはマップとパンフレットが設置されていて、最初の会場でもらいました。

鑑賞した展示

岡崎エリア

  • 東岡崎駅ビル(二藤建
  • 岡崎シビコ(コラムプロジェクト「トランスディメンションーイメージの未来形」、野村在)
  • 石原邸
  • 岡崎表屋(シュレヤス・カルレ)

豊橋エリア

  • 穂の国とよはし芸術劇場PLAT(大巻伸嗣)
  • 水上ビル(ラウラ・リマ、ヨルネル・マルティネス、イグナス・クルングレヴィチュス)
  • はざまビル(リビジウンガ・カルドーゾ、ウェンデリン・ファン・オルデンンボルフ)
  • 開発ビル(石田尚志、佐々木愛、ニコラス・ガラニン、岡部昌生、小林耕平、グリナラ・カスマリエワ&ムラトベック・ジュマリエフ、久門剛史、ハリル・ラバー、ハーバード大学感覚民族誌学ラボ)

雑感

両エリアの展示を見回って感じたのは、展示の内容よりも展示する町や会場との向き合い方が大事なのかもしれない、ということです。作家として当たり前なことなのかもしれませんが、会場をちゃんと下見して、そこに見合った設営をしている人が目立っていたような気がします。これが得られたものの中で一番大きかったです。

また、場の持つ雰囲気を大事にしている姿勢も多くの会場で感じました。振り返ると、それまでもそのような場面に接していたと思うのですが、こうも一遍にそのような姿勢を見続けたおかげで、場を理解することが作品作りの始まりなのではないか、という思いが生じています。

それと、展示を見ること自体、内容が面白ければ時間を忘れて見てしまうので、日帰りは相当困難です。仮に日帰りせざるを得ないのであれば、もう少し減らさないと無理かもしれないですね。
岡崎:シビコ、表屋
豊橋:開発ビル、水上ビル、最後にPLATで光の昇降
とか。

長くなりますが、以下に、展示会場について補足します。

東岡崎駅ビル
まずは名鉄東岡崎駅ビルの二藤建人の展示を見ることに。岡ビル百貨店の看板はあるものの、駅ビルらしい入り口が見当たらず、警備員の人に聞いてみたら、岡ビルが駅ビルでした!

店内も案内看板もレトロで、昭和30年代にタイムスリップしたような気分。2階は店舗として利用されているようですが、展示会場の3階は1店舗(飲食店のキッチンこも)を除き、全く使われていない状況。展示物を見るだけでなく、建物の設備にもつい目がいってしまいます。
二藤建人・展示のフォトセット

岡崎シビコ
東岡崎駅から1.2キロほどの距離です。トリエンナーレのレンタサイクルやバスもありましたが、歩いて行きました。
駅前の繁華街の雰囲気と異なり、乙川を渡ると庁舎や会社が多くビジネス街といった感じで、訪れたのは土曜日でしたが人があまり歩いていませんでした。また、結構古い建物が多く、3階建ての石造り風にみえる商店や、トタンのサビが存在感を醸し出す大きな倉庫などに目を奪われました。

シビコ1階にトリエンナーレのビジターセンターがありました。中にはミソスープスタンドなるものがあり(岡崎にはいくつか八丁味噌の蔵があるそうです)、ハンドドリップによるミソスープがいただけました(トリエンナーレのチケットを持っている人のみ)。暑い中歩いてきてちょっと疲れていたので、とても嬉しかったです。

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岡崎シビコはショッピングセンターですが、フロアの所々にお店がある不思議な空間でした。帰宅後調べたら、デパート→ジャスコ→ジャスコ移転後は残った専門店のみ、という歴史があることを知りました(出典:http://syouwasuper.web.fc2.com/shop/others/cibico.html)。増床時に4つのビルがくっついて1つになったとありますが、確かに中は広くて、展示をみて1階に降りて、入ったドアと違うドアから表に出たら、どこにいるのか一瞬わからなくなってしまいました。

展示は6階のフロア全てを使っていて、5人の作家のトランスディメンションも1人分のスペースがかなり広く、仕切ってあるわけでもないので、お互いの作品が視覚的に微妙に影響を与え合っているところが面白かったです。
トランスディメンションーイメージの未来形・展示のフォトセット
野村在・展示のフォトセット

石原邸
岡ビルでトリエンナーレボランティアの方から石原邸は見た方がよいと聞いたので、ちょっと遠いけど行ってみることに。1862年に作られた古民家に足を踏み入れると、学生時代に授業の一環で行った古民家資料館を思い出しました。天井の低さに驚き、部屋と部屋、外と廊下を分ける引き戸の開放感が心地よかったです。

途中、籠田公園にジョアン・モデのネットプロジェクトがあり、参加しました。籠田公園にいたボランティアスタッフにご飯が食べられる場所を聞きましたが、軽食だったり、完売だったりして、食べられず、お腹が相当空いていました。
石原邸・展示のフォトセット

岡崎表屋
シビコの方まで戻るとランチ時間過ぎでも開いているところがあり、遅いお昼ご飯を。カフェでトマトパスタという観光っぽさがない食事でしたが美味しかったです。

さて、表屋はビルの外観の見た目の存在感が強く、中に入りたいと思わずにはいられない感じでした。

階段や廊下が狭かったり、歩くとミシミシ音をたてる床など、展示物だけではなく、場所も主張していて、カルレさんの使い方から、会員になっている奥野ビル306号室の使い方のヒントを得たような気がします。
シュレヤス・カルレ・展示のフォトセット

穂の国とよはし芸術劇場PLAT
岡崎の古い建物に魅せられて、豊橋到着は予定を1時間ほどオーバー。豊橋駅からPLATまでは外の連絡通路で結ばれていて、晴れていて気持ちよかったです。大巻さんの作品(切り抜き模様が施された巨大なツボに光が昇降するもの)は、連絡通路から入った2階から見下ろす形で、まず見ました。

スケール感にただただ圧倒されました。光の昇降は、どうも光に押しつぶされる感じらしいのですが、昇降が始まるのは18時からで、これも見られませんでした。なんとか再訪したいものです。
大巻伸嗣・展示のフォトセット

水上ビル
1960年代に農業用水路上に建てられたビル群からなる水上ビルは、PLATに行く連絡通路から、その姿を見ることができました。ここ、豊橋駅前で、豊橋は新幹線が停まる駅ですが、駅前の開放感に驚きました。手前の緑地にもかつてはビルが建っていて更地になったのでしょうか?水上ビルは緑地の奥の側面が茶色いビルです。

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こちらでは、3つの展示がありました。ラウラ・リマの小鳥も面白かったですが、なんといってもイグナス・クルングレヴィチュスの映像作品が圧巻でした。《INTERROGATION》「尋問」は、タイトル通り、米国の本物(と思われる)の容疑者の最初の尋問の様子の何らか(テープとかテキスト)を手に入れて、文字起こしした作品なのではないかと思い込んでいます!尋問官と容疑者の声の調子や心的状況を効果音や色で示して、見ていて本当にドキドキしました。

また、ヨルネル・マルティネスのセメント袋(紙製)で作ったZINEも面白かったです。この方、来日して作ったZINEでは水上ビルで展示されている小鳥たちのお食餌「カナリヤシード」の袋(セメント袋と同程度の大きさの紙製)を使っていました。

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はざまビル
水上ビルから豊橋駅の正面に向かう通り(市電が走る道)へ。リビジウンガ・カルドーゾの宇宙船と、ウェンデリン・ファン・オルデンンボルフの映像作品。宇宙船の近くにアンプが置いてあって、一体どういうこと?と思いましたが、あいトリNAVIの記事をみたら、DJブース的に使われるポピュラーなものだそうで、実際に利用しているところを見てみたかったです。ここも、ただ廻るだけになってしまい残念。

開発ビル
駅前の10階建ての大きな複合ビルで、1階は商業施設が入っていますが、階上は会社が入っている模様。そのフロアのところどころが空きエリアになっているようで、10、9、8、6、5、2階に展示があります。10階から見ていくと順路通りに迷わずに見られます。

ここもただ廻るだけな感じになってしまいました。ちゃんと見ようとすると時間がかかると思うので、豊橋に来たら、まずここで、最後はPLATで夜の光の昇降を見ればよい感じです。再訪したいなあ。

中でも、ハーバード大学感覚民族誌学ラボの映像作品は、漁船で撮影した映像を特大クッションにもたれて寝そべって見る、という趣向になっていて、全部みたかったですね。

9階の佐々木愛さんの作品は、お菓子につかう砂糖と卵白でつくられたロイヤルアイシングという技法で描かれた壁画で、この展示会場で作成した模様。巨大なので、閉幕後は取り壊すそうです。
石田尚志・展示のフォトセット
岡部昌生・展示のフォトセット
久門剛史・展示のフォトセット

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