木之下晃「石を聞く肖像」覚書

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武満徹の写真集の写真家、木之下晃について知りたくなり、木之下晃アーカイブスに紹介されている出版物を見ていたら、「石を聞く肖像」という写真集がどうしても気になってしょうがなくなりました。

石を聞く肖像
「この石を見て感じたことをカメラの前で表現してください」
この問いかけに応じてくれた200人を超える芸術家の、世界に類のない肖像写真集。
音楽家との親しい交流の中から20年にわたって撮影してきたシリーズ『石を聞く肖像』が写真集になりました。世界で活躍する芸術家たちの意外な様子が、一つの石をキッカケに垣間見えます。
写真 木之下晃 対談 大原哲夫 / 出版:飛鳥新社 / 発行:2009.09

石の形が鳥かなにかの卵のような形をしています。そのせいか、生命が宿っているようにも思えます。以下に覚書したテキストで、その石が1974年に木之下氏により河原で偶然見つけられたもので、それから氏の机の上に置かれたままだったのが、1991年に初めて写真の小道具として使われ、以来18年にわたりアーティストにたのんで石を持ったポートレイトを撮りためたということが判りました。

インターネットで見ることができた何枚かの著名アーティストと石の写真から思ったのは、アーティストの肖像というよりも、石が主役のように思え、アーティストたちはまるで石と撮ることを楽しんでいるかように見えるということでした。撮りためた18年の間には、おそらく木之下氏の石のことを耳にしていたアーティストもいると思われ、そのような有名な石と一緒に写真を撮られることは嬉しい人もいただろう、そんなことも感じました。

撮られ慣れているアーティストではなく、ポートレートに慣れない人でもこの「石」のようなキッカケがあると写真撮影も楽しくなるかもしれない、と個人的には思いました。

今年の1月にお亡くなりになった木之下晃氏ですが、新聞の連載「音楽写真の夢」やフォトエッセイ「音楽を観る愉しみ」も何らかの形で読める日が来てほしいと思います。

●「石を聞く肖像」など多くの木之下晃の写真集の編集をされた方の追悼文
http://oharatetsuo.jimdo.com/木之下晃さん追悼/

●紀伊国屋書評空間BOOKLOG「石を聞く肖像」の書評
http://booklog.kinokuniya.co.jp/imaiakira/archives/2009/10/post_50.html

●木之下晃のブログ記事「SUPER FLUTISTS」(フルート奏者の演奏姿とオフの姿〜石を聞く肖像の写真も)
http://kinoshitaakira.blog.fc2.com/blog-entry-69.html

●教育芸術社の2010年インタビュー(とてもよいインタビュー)
http://www.kyogei.co.jp/data_room/kaze/vent16p34-p37.pdf

●アサヒカメラ2009年11月号目次(ブックインタビューが掲載されているらしい)
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=10870

●日本カメラ2010年1月号目次(上野修によるインタビューが掲載)
http://www.nippon-camera.com/list.php?dt=605&1308991848

●松本徳彦・木之下晃・英伸三「300歳の会」3人展(2011年)のプレスリリース(観てみたかった)
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000002663.html